今回は、画像読影シリーズの第3弾として、MRI画像について話していきます。
MRI画像の概要や種類について説明をしていきます。
MRI画像の勉強の導入に参考していただけたらと思います。
- MRI画像とは
- MRI画像の原理
- MRI画像の種類
- MRI画像における各組織の写り方
- MRI画像のデメリット
MRI画像とは
MRIは、Magnetic Resonance Imagingの略で、日本語で磁気共鳴画像といいます。
1973年にイギリスの物理学者マンスフィールドは、人体を地場の中に置き、ラジオ波を照射することで、身体内部の断面画像を写すことに成功しました。
これを基に1977年、MRI装置が医療現場に普及し始めました。
MRI画像の原理
MRIはCTと同様に、ガントリーといわれる筒状の装置の中に人体を入れて撮っていきます。
MRIのガントリーはCTと違い、超伝導磁石といわれるシステムが備わっています。
人体内には、無数の水素原子核(プロトン)が不規則な方向を向き存在しています。
被検者をガントリーの中に入れると、人体内の水素原子核(プロトン)が人体の頭側と尾側の縦方向を向きます。
ガントリーの内部に入った状態の人体にラジオ波を照射すると、縦方向を向いていたプロトンが横方向を向きます。
一定時間後にラジオ波の照射を止めると、プロトンは元の方向に戻ります。(これを共鳴といいます)
このプロトンの戻るタイミングは、組織によってわずかに異なります。(これを緩和といいます)
このわずかな『時間差』を画像化したものがMRI画像になります。
この共鳴と緩和を繰り返し、条件の違う種類の画像を撮像するため、MRIは撮影時間がかかります。
MRI画像の種類
- T1強調画像
- T2強調画像
- 拡散強調画像(DWI)
- FRAIR画像
- T2*強調画像
- STIR画像(脂肪抑制画像)
- プロトン密度強調画像(PDWI)
T1強調画像とT2強調画像
先ほど、身体内部には無数のプロトンがあり、そのプロトンの緩和のタイミングの『時間差』を画像化したものがMRI画像と述べました。
そのプロトン(水素原子の陽子核)は無数に存在しますが、実は2種類のみとなっています。
①脂肪組織に存在する『脂肪プロトン』
②脂肪以外の組織に存在する『水プロトン』
この2種類のプロトンのみが身体内には存在しています。
T1強調画像とT2強調画像は、『強調』といわれているように何かを強調している画像になります。
T1強調画像は、『脂肪組織』を強調しており、
T2強調画像は、『水H₂O』を強調しています。
ここで出てきた『強調画像』は、その画像において強調したい組織を白く写します(高信号)。
例えば、脊椎を写したT1強調画像とT2強調画像があった場合、どちらがT1でT2かを見分ける場合、脊髄液を見つけましょう。
脳脊髄液は『水』であるため、T2強調画像では白く写ります。
そのため、脊柱管内の脊髄液が白く写っている場合、その画像がT2強調画像になり、脊髄液が黒く写っている画像がT1強調画像になります。
しかし、脊椎を写したT1強調画像とT2強調画像の皮下脂肪を見た際に、両方で皮下脂肪が白く写ります。
T2強調画像では、水は白く写り、脂肪組織は黒く写ると述べました。では、なぜT2強調画像でも皮下脂肪が白く写るのでしょうか?
脂肪組織には水素原子H⁺の密度が濃いため、T2強調画像でも強調されます(白く写ります)。
この後にも説明しますが、MRI画像には様々な種類が存在しますが、MRI画像の基本となるのはこのT1強調画像とT2強調画像で、その他の画像はこの2つの画像の条件を変更した応用的な画像になります。
拡散強調画像(DWI)
拡散強調画像(Diffusion weighted image:DWI)とは、組織内の水分子の動き(拡散運動)を画像化したもの。
先ほど、『強調画像』とは強調したい部位を高信号を示す(白く写す)と言いましたが、DWIでは拡散している部位は『低信号』を示します。すなわち、
拡散が激しい部位 ⇨ 低信号
拡散が乏しい部位 ⇨ 高信号
脳梗塞のように、水の運動が乏しい部位では、高信号を示します。そのため、脳梗塞の急性期では拡散強調画像が診断として用いられます。
FLAIR画像(水抑制画像)
FLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery:水抑制画像)とは、T2強調画像の応用で、T2強調画像から水の信号を抑制した画像です。
抑制されるのは、脳脊髄液などの正常な水のみで、血液などの水分は白く写ります。
そのため、液体に隣接した部分での病変の抽出に優れています。
陳旧性の脳梗塞など液化してしまった病巣は、FLAIR画像では黒く写ります。一方で、急性脳梗塞(発症6時間~)では白く写ります。
脳出血は血液なので、白く写ります。
脳室周囲白質病変(PVH)や大脳深部白質や皮質下白質病変(DSWMH)でも白く写ります。
T2*強調画像
T2*強調画像(T2*WI)とは、骨髄(脂肪髄)の信号が抑制され、骨内が低信号に写されます。
骨は皮質骨と海綿骨で構成され、骨内部の海綿骨(骨髄)は脂肪髄といわれており、脂肪プロトンを多く含みます。そのため、T1強調画像では骨は白く写ります。しかし、先ほども述べたように、脂肪組織は水素原子を多く含むため、T2強調画像でも骨は白く写ってしまいます。こうなると、T1強調画像とT2強調画像では骨内部の病変の検出が難しいことが言えます。
T2*強調画像で骨髄を抑制することで、骨挫傷や骨髄炎などの検出が可能となります。基本的にはT2強調画像になるため、急性炎症や水腫は高信号を示します。
脳外科分野では、微小な出血性病変の検出に用いられており、出血部位は黒く写されます。
STIR画像(脂肪抑制画像)
STIR画像(脂肪抑制画像)は、『身体内の全ての脂肪組織』を抑制した画像です。
T2*強調画像は、脂肪組織である骨髄のみを抑制した画像に対して、STIR画像は骨髄を含む全ての脂肪組織を抑制します。
そのため、STIR画像はシンプルに水のみを強調した画像になります。
運動器において、MRI画像で異常所見を見つける場合、炎症所見や異常部位では『水』が生じやすいため、『水』を探すことが重要です。
例えば、正常の膝関節のSTIR画像において、膝蓋靭帯の膝蓋骨近くには高信号は認めませんが、ジャンパー膝では膝蓋靭帯に炎症が生じ、STIR画像で高信号を認めます。
このように、STIR画像は本来水が生じていない部位に炎症などの病変により、水腫が生じた際の検出に優れています。
プロトン密度強調画像(PDWI:proton density weighted image)
プロトン密度強調画像とは、水素原子核の分布をみるもので、わずかな水の検出に用いられます。
関節軟骨と関節液、軟骨下骨との間に良好なコントラストが得られやすいです。
そのため、整形外科分野では十字靭帯損傷や半月板損傷など、膝関節診断に多用されています。
MRI画像における各組織の写り方
ここまで、MRI画像の種類とその特徴について説明をしてきました。
各画像における写り方をここでまとめておきます。
MRI画像において、白く写ることを『高信号』、黒く写ることを『低信号』といいます。
ちなみにCT画像では、白く写ることは『高吸収』、黒く写ることを『低吸収』といいます。
水 | 脂肪 | 筋 | 骨 | |
T1強調画像 | 低信号 | 高信号 | 低信号 | 高信号 |
T2強調画像 | 高信号 | 高信号 | 低信号 | 高信号 |
T2*強調画像 | 高信号 | 高信号 | 低信号 | 低信号 |
STIR画像(脂肪抑制画像) | 高信号 | 低信号 | 低信号 | 低信号 |
FLAIR画像(水抑制画像) | 低信号 | 高信号 | 低信号 | 高信号 |
MRI画像のデメリット・禁忌
MRI画像のデメリット・禁忌として以下のものが挙げられます。
- 検査時間がレントゲンやCTと比べ長く(20分~40分程度)、閉所恐怖症や安静が保てない認知症などの場合は困難。
- ペースメーカーや埋め込み型除細動器
- 人工内耳、人工中耳
- 冠動脈ステント挿入術2週間以内
- 金属製の心臓人工弁
- 着脱不可な金属製の義歯や義眼
- チタン製以外の脳動脈瘤クリップ
最近では、ペースメーカー挿入術後でも検査可能な病院も増えているようです。
今回は、MRI画像の基礎的な内容についてお話させていただきました。
MRI画像の勉強の導入に参考にしていただけたらと思います。
次回の画像読影の基礎では、エコー画像の基礎についてお話できたらと思います。