今回は膝関節の痛みというテーマで、膝関節過外旋についてお話していきます。
膝関節の痛みで、膝関節の過外旋は非常に重要視されている症状です。
今回は膝関節過外旋の原因や疼痛組織についてお話していきます。
今回の内容
- 膝の痛みに関わる膝関節過外旋とは
- 膝関節過外旋のタイプ分類
- 膝関節過外旋によって生じる疼痛
- 膝関節過外旋の原因
- 膝関節過外旋の評価方法
今回参考にした書籍を掲載しています。
膝の痛みに関わる膝関節過外旋とは
膝の痛みは、高齢者だけでなく若年者でも見られる症状です。
高齢者でよく発症する変形性膝関節症は、膝の内反(O脚)の重症化に伴い、痛みも増悪すると言われています。
しかし、実際の臨床現場では、重度の内反変形を認める変形性膝関節症の症例で、膝痛を認めないことが度々あります。
一方で、内反変形(O脚)をほとんど認めない軽度の変形性膝関節症の症例でも、強い膝痛を認めることがあります。
若年の膝痛症例においては、内反などの変形が生じていなくても動作時などで痛みを認めます。
過度な変形が無いにもかかわらず、膝に痛みが生じている場合、多くの症例で疼痛の原因となっているのが『膝関節の過外旋』です。
膝関節の過外旋により、内旋作用の筋や脂肪体、神経が過度にストレスを受けることで疼痛が生じていると考えられています。
最近では、変形性膝関節症の膝痛において、内反(O脚)よりも膝関節過外旋が重要視されてきています。
膝関節過外旋のタイプ分類
膝関節過外旋は、膝関節が過度に外旋することを言いますが、そのタイプは3つに分けられます。
①脛骨に対して大腿骨が内旋しているタイプ
②大腿骨に対して脛骨が外旋しているタイプ
③大腿骨が内旋し脛骨が外旋しているタイプ
膝関節過外旋がどのタイプで生じているかによって治療方法が大きく変わってきます。
膝関節過外旋によって生じる疼痛
膝関節過外旋は、過度な外旋によって膝関節周囲の様々な軟部組織に疼痛を引き起こします。
症例によって疼痛を訴える部位は様々で、前面から内側、後方の膝窩部と様々な部位の疼痛を訴えられます。
膝関節過外旋によって疼痛を引き起こす組織は以下の組織が挙げられます。
- 縫工筋鵞足部
- 薄筋鵞足部
- 半腱様筋鵞足部
- 半膜様筋
- 膝窩筋
- 内側関節包
- 膝蓋下脂肪体
- 伏在神経性
膝関節過外旋によって、内旋作用を持つ筋は伸張ストレスが生じ痛みを生じます。
膝関節内旋作用を持つ縫工筋、薄筋、半腱様筋、半膜様筋の腱である鵞足はその走行的に伸張ストレスに加え、摩擦ストレスも生じることで鵞足部には疼痛が発生しやすくなります。
また、膝関節内側部~下腿内側の感覚を支配している伏在神経は、大腿部遠位で縫工筋を貫通し遠位へ向かっていきます。そのため、膝関節過外旋で縫工筋に過緊張が生じたり、伏在神経との間で滑走障害が生じると、伏在神経の障害によって膝関節内側に疼痛が生じます。
膝関節過外旋の原因
膝関節過外旋の原因には以下の要因があります。
- 膝関節周囲組織が原因の膝関節過外旋
- 股関節周囲組織が原因の膝関節過外旋
- 足関節周囲組織が原因の膝関節過外旋
①膝関節周囲組織が原因の膝関節過外旋
⇨脛骨外旋作用を持つ大腿二頭筋や、大腿二頭筋と隣接する外側広筋、腓腹筋外側頭の伸張性低下や癒
着によって膝関節が過外旋を生じます。
また、本来の膝関節は外旋可動域よりも内旋可動域の方が小さくなっています。
そのため、半膜様筋や半腱様筋などの後内側組織の柔軟性が低下すると、過内旋になるよりかは内旋
可動域が制限されることが多いです。
その理由として、Obligate translationという現象が関連していると考えられます。
Obligate translationとは、筋や関節包などの関節周囲組織の伸張性が低下することで、関節運動時に伸張性が低下した方向への滑りや転がりといった骨運動が制限されることを言います。
半膜様筋や半腱様筋などの後内側組織の伸張性が制限されると、膝関節内旋に対する脛骨の後方移動
が制限されるため外旋位になると考えられます。
⇨大腿二頭筋や半膜様筋、半腱様筋、腓腹筋の柔軟性が低下しているか評価必要
②股関節周囲組織が原因の膝関節過外旋
⇨膝関節過外旋のタイプには、脛骨に対して大腿骨が過度に内旋しているタイプがあります。
中殿筋後部線維や大殿筋、外旋六筋などの股関節外旋筋の筋力低下が生じると、大腿骨が過度に内旋
し、結果として膝関節過外旋を生じます。
若年女性の膝関節過外旋ではこのタイプが非常に多いです。
⇨股関節外旋・外旋の筋力評価が必要
③足関節周囲組織が原因の膝関節過外旋
⇨膝関節過外旋のタイプに、大腿骨に対して脛骨が過外旋しているタイプがあります。
足部からの上行性運動連鎖で足部アライメントが崩れると、脛骨が過外旋を起こします。
変形性膝関節症でも、若年性の膝関節過外旋症例でも、後足部は回内位を呈していることが多く、症
例によってはアーチ全体が消失し、扁平足を呈していることも多いです。
しかし、一般的に後足部回内による上行性運動連鎖では、脛骨は内旋すると言われています。
では、なぜ後足部が回内位であるにも関わらず、脛骨が外旋するか?
それは、脛骨と足部を繋いでいる距骨が過外旋を呈しているため、上部の脛骨は距骨からの運動連鎖によって外旋を呈すると言われています。
⇨距骨の内旋可動域の評価が必要
2.膝関節過外旋の評価方法
①視診による評価方法
視診による評価は、膝蓋骨の幅に対して脛骨粗面の位置がどこにあるかで評価します。
正常では、脛骨粗面は膝蓋骨中央の線上に位置します。
膝蓋骨中央の線上から外側に位置している場合、膝関節過外旋位であると言われています。
膝蓋骨の幅から脛骨粗面が完全に逸脱している場合、膝関節過外旋著明となります。
②他動による内旋可動域の評価
他動による内旋可動域の評価では、膝伸展位で一方の手で大腿骨を固定し、もう一方の手で脛骨を内旋方向に動かします。
内旋方向に動かした際の可動性と左右差を評価します。
まとめ
- 膝関節過外旋は膝関節の疼痛に大きく関与している。
- 膝関節過外旋には、大腿骨内旋タイプ、脛骨外旋タイプ、大腿骨内旋脛骨外旋タイプの3つに分けられる。
- 膝関節過外旋の原因には、股関節周囲組織が原因の場合、膝関節周囲組織が原因の場合、足関節周囲組織が原因の場合の3つがある。
- 膝関節過外旋の評価として、視診による評価と他動による評価が重要である。
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