今回は脳梗塞の病態の中でも、アテローム血栓性脳梗塞についてお話していきます。
アテローム血栓性脳梗塞はラクナ梗塞に次いで多い脳梗塞になっています。
今回参考にした書籍を掲載しています。
今回の内容
- アテローム血栓性脳梗塞の病態
- アテローム(動脈硬化)の好発部位
- 側副血行路の発達
- アテローム(動脈硬化)の予防
アテローム血栓性脳梗塞の病態
アテローム血栓性脳梗塞は、アテローム硬化といわれる動脈硬化病変によって、血栓が動脈を閉塞したり、プラークといわれる塊が動脈を閉塞することで脳梗塞が生じます。
ラクナ梗塞は直径1㎜以下の穿通枝動脈といわれる細い血管の閉塞ですが、アテローム血栓性脳梗塞では、直径5㎜以上といった太い動脈に閉塞が生じます。
アテローム(動脈硬化)から血栓ができて、血管を閉塞するものを血栓性といいます。
アテローム(動脈硬化)からできた血栓が血流にのって、末梢の血管を閉塞するものを塞栓性といいます。
アテローム(動脈硬化)によって血管が狭小化した状態で、低血圧や脱水など、脳灌流血液量が減少することで血管末梢領域に脳梗塞が生じることを血行力学性といいます。
アテローム硬化とは、動脈硬化病変の一つで動脈の内膜に脂肪やコレステロールが蓄積されることで、プラークと言われる脂肪の塊が形成され動脈が硬くなった状態を言います。
このアテローム硬化を放置すると、徐々にプラークは大きくなり、次第にプラークは破れることで血管内に血栓を作ります。
プラークの増大や血栓の形成が脳梗塞を生じさせます。
血栓性
塞栓性
血行力学性
アテローム硬化(動脈硬化)が生じやすい部位
アテローム硬化(動脈硬化)が生じやすい部位として、血流速度の影響を受けやすい血管分岐部や分岐直後に生じやすいとされています。
主に、大動脈弓部、椎骨動脈起始部、内頚動脈起始部、内頚動脈サイフォン部、脳底動脈起始部、中大脳動脈水平部が好発部位とされています。
側副血行路の発達
アテローム血栓性脳梗塞による、動脈の狭窄や閉塞は徐々に進行していきます。
動脈の狭窄や閉塞は、動脈の領域部分の血流量が低下しますが、徐々に進行するため側副血行路が発達し、血流減少部分を他の血管が補填することになります。
側副血行路とは、その部位を支配している主要血管が閉塞や狭窄した際に、その機能を代償するために発生する、新たに作られる循環経路のことです。
側副血行路は、主要血管の代用であり、発達の程度も個人差があるため、脳梗塞になった際には代償できない可能性もあります。
動脈硬化の予防
先ほども述べたように、アテローム硬化と言われる動脈硬化病変は、アテローム血栓性脳梗塞の原因になります。
動脈硬化の原因として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、多量飲酒、喫煙、肥満、加齢などがあります。
動脈硬化予防のためには、これらのリスク因子を予防することが重要になります。
高血圧、糖尿病、肥満には食事療法と有酸素運動が重要です。
特にウォーキングやランニングといった有酸素運動には、血圧を低下させる降圧効果、インスリン感受性の向上による血糖低下作用、消費エネルギー量上昇や基礎代謝向上による体重減少作用があります。
多量飲酒や喫煙に対しては、禁煙や飲酒量の制限が重要になります。
これらから、アテローム硬化(動脈硬化)の予防には、食事療法、有酸素運動、禁煙や飲酒量の制限が重要になることが言えます。
まとめ
- アテローム血栓性脳梗塞とは、血管内にできたアテローム硬化(動脈硬化)により生じた血栓やプラークが動脈を閉塞、狭窄することで生じる。
- アテローム硬化(動脈硬化)が生じやすい部位は、大動脈弓部、椎骨動脈起始部、内頚動脈起始部、内頚動脈サイフォン部、脳底動脈、中大脳動脈水平部である。
- 動脈硬化の原因は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、多量飲酒、喫煙、肥満、加齢などがある。
- 動脈硬化の予防には、食事療法、有酸素運動、禁煙、飲酒量の制限が重要。