今回は、腰痛についてお話していきます。
数年前まで、腰痛治療の分野において、非特異的腰痛という言葉をよく耳にしました。
非特異的腰痛は、ヘルニアや圧迫骨折、脊柱管狭窄症などの明らかな器質的異常や神経学的異常が無い腰痛といわれています。
そういった原因の分からない非特異的腰痛は、2012年頃は腰痛患者の約85%を占めると言われてきましたが、現在では約80%まで原因が明らかになってきています。
今回は、診察や画像所見で明らかな病態が明確化できる特異的腰痛以外の腰痛についてお話をしていこうと思います。
●腰痛患者の原因(腰痛診療ガイドライン2012年版)
①特異的腰痛(15%) ⇨ 医師の診察や画像所見で病態が明確化できる腰痛
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎椎間板ヘルニア
・分離性脊椎すべり症
・変性脊椎すべり症
・化膿性脊椎炎
・脊椎圧迫骨折
・脊髄腫瘍
・腹部大動脈瘤 など

②非特異的腰痛(85%) ⇨ 明確な器質的異常や神経学的所見の異常が無い腰痛
『腰痛診療ガイドライン2012年版』では、欧米の権威ある雑誌に発表された論文を引用し、“非特異的腰痛が腰痛の85%を占める‘’と記載しました。
すなわち、原因の分からない腰痛は腰痛患者の85%に当たると言われていました。
●腰痛患者の原因(腰痛診療ガイドライン2019年版)
①椎間関節性 ⇨ 22%
②筋・筋膜性 ⇨ 18%
③椎間板性 ⇨ 13%
④脊柱管狭窄症 ⇨ 11%
⑤椎間板ヘルニア ⇨ 7%
⑥仙腸関節性 ⇨ 6%
⑦診断不明(非特異的腰痛) ⇨ 22%
『腰痛診療ガイドライン2019年版』では、75%以上が診断可能であり、診断不明の非特異的腰痛と言われるものは22%に過ぎなかったと報告されました。
今回は、原因が明らかとなった筋筋膜性腰痛、椎間関節性腰痛、椎間板性腰痛、仙腸関節性腰痛について簡単にお話していきます。
各腰痛の病態や評価、治療については、次回以降で各論として細かくお話できたらと思います。
●筋・筋膜性腰痛
筋筋膜性腰痛とは、腰部に存在する筋や筋膜による疼痛で、疼痛のトリガーとなる筋や筋膜は以下の物が挙げられます。
①広背筋
②下後鋸筋
③胸棘筋
④多裂筋
⑤最長筋
⑥腸肋筋
⑦腰方形筋
⑧棘間筋
⑨横突間筋
⑧大腰筋
⑨胸腰筋膜
このように腰部に存在する筋や筋膜は多く存在します。
これらの筋や筋膜に攣縮(spasm)や滑走障害が生じることで、動作時の疼痛を引き起こします。
筋筋膜性腰痛を治療していく際には、これらの筋を触り分けてどの筋や筋膜に疼痛が生じているか触診できる技術が必要になります。
●椎間関節性腰痛
椎間関節性腰痛とは、上位椎骨の下関節面と下位椎骨の上関節面で構成される椎間関節周囲の組織で生じる疼痛のことを言います。椎間関節周囲の関節包や筋・腱靭帯付着部には感覚受容器が多く、椎間関節周囲は疼痛が発生しやすい構造となっています。
椎間関節性腰痛は、伸展などの椎間関節の圧縮ストレス(Impingement)が生じた際に起こしやすく、その症状は一側性を示すことが多いと言われています。

●椎間板性腰痛
椎間板性腰痛とは、上位椎体と下部椎体の間にある椎間板に何らかのストレスが生じ、疼痛が発生した状態のことを言います。
長時間の特定の姿勢保持や繰り返し動作により、腰椎周囲の靭帯緊張や関節の反射性収縮の低下により関節は不安定になります。その状態での動作や姿勢の繰り返しにより、椎間板への過剰なストレスや損傷を引き起こし疼痛を生じさせます。
椎間板周囲の軟骨終板では、海綿骨と水分や栄養の代謝を行っているが、加齢による変性や損傷が生じると、代謝が低下し、さらに椎間板線維輪の変性や損傷が進み、ヘルニアが生じます。


●仙腸関節性腰痛
仙腸関節性腰痛は、仙骨と腸骨で構成される仙腸関節の周囲で疼痛が生じている状態を言います。
仙腸関節性疼痛において、疼痛のトリガーとなる組織は、主に筋と靭帯があります。
疼痛トリガーとなる筋は、主に多裂筋があります。
疼痛トリガーとなる靭帯は、腸腰靭帯、骨間仙腸靭帯、後仙腸靭帯、仙結節靭帯、仙棘靭帯があります。



