今回は、3学会合同呼吸療法認定士について解説していきます。
2024年現在、44,127人の医療職者の方が3学会合同呼吸療法認定士を有しており、そのうち16,964人(38%)が理学療法士となっております。
私も2021年の認定試験に合格し、3学会合同呼吸療法認定士を取得しています。
呼吸リハビリテーション領域において、3学会合同呼吸療法認定士はリハビリテーション業界の中でも注目されている認定資格となっています。
今回は、3学会合同呼吸療法認定試験の申し込み方法や勉強方法について、経験談を含めてお話していきます。
- 3学会合同呼吸療法認定士とは
- 認定試験申し込みまでにしないといけないこと
- 認定試験後の対応
- 効率的な試験勉強方法
認定試験に受けて使用した参考書を載せています。
●3学会合同呼吸療法認定士とは
「3学会合同呼吸療法認定士」の資格は、3学会(一般社団法人 日本胸部外科学会、一般社団法人 日本呼吸器学会、公益社団法人 日本麻酔科学会)から選出された委員により構成されている「3学会合同呼吸療法認定士認定委員会」が受講資格を有すると判定した者のうち、同委員会が実施する認定講習会の課程を履修したのち、同委員会が施行する認定試験において一定の合格基準に達した者に与えられるものとなっています。
受験資格が認められる専門資格は
- 臨床工学技士
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
の5つの国家資格保有者になります。
●認定試験申し込みまでにしないといけないこと
●認定試験を申し込むための大前提
ここから認定試験の申込方法について説明をします。正直、認定試験申し込みまでの過程が一番大変でした。
認定試験は、理学療法士が誰でも申し込めるわけではなく、認定試験を申し込む前に認定講習会を受講していることが前提として必要になります。
認定試験を受験するための認定講習会を受講するまでの流れとして、
1.大前提として、認定講習会の申請書類提出時に実務経験年数が2年以上であることが条件として必要。
2.認定講習会の申請書類提出日から過去5年以内に認定委員会が認める学会や講習会などに出席し、12.5点以上を取得する。
●認定委員会が認める学会や講習会の参加
認定講習会の受講資格のためには、認定委員会が認める学会や講習会に出席し、12.5点以上の単位を獲得する必要があると先述しました。
この認定委員会が認める学会や講習会は、リンクに張り付けているので、参考にしてください。
どのセミナー団体も一回のセミナー参加で12.5点以上獲得が可能です。
●認定講習会受講を申し込む
認定委員会が認める学会や講習会に参加し、12.5点以上取得すると認定講習会を申し込みことができます。
また、認定講習会申し込みの申請書類を提出日に実務経験年数が2年以上である必要があります。
認定講習会受講申し込みをするためには、まず認定委員会ホームページに2月ごろに掲載される実施要項に記載されているメールアドレスからEmail登録をする必要があります。今年の、Email登録受付が開始されたのが2024年2月14日10時~でした。
登録完了メールの自動返信から、書類作成フォームにアクセスし情報の入力を進めます。
入力が完成したらダウンロード書類を印刷します。
●申請書類への署名と捺印、実務経験証明書の交付
印刷した書類に署名と捺印をしたら、認定講習会の申し込みに必要な書類の作成は終了になります。
そして、もう一つ申し込みに必要な書類として、実務経験が2年目以上であることを証明する公印付きの実務経験証明書を、職場で交付してもらう必要があります。
ここで重要なのが、免許登録から申し込みが2年以上経過している必要があるということです。例えば、3年目で認定講習会を申し込む場合、申し込み申請書類の受付期間が4月15日であった場合、理学療法士や作業療法士の免許登録日が4月25日であった場合、実務経験としては2年以上ではないため、認められません。自分の免許登録日がいつなのかは前もって確認しておく必要があります。
実務経験日数の考え方については、認定委員会ホームページのQ&Aに記載されているので参考にしてください。
●認定講習会申請書類の送付
認定審査申請書と実務経験証明書を揃えたら、A4サイズの封筒に入れ郵送します。この時重要なのは、『特定記録郵便』以外は受理されないので注意しましょう。
認定講習会申請書類送付の受付期間は、今年度は4月15日(月)8時~19日(金)17時までだったようです。
現在は、提出順ではなく、定員超過時は抽選になるようです。私が受講した年もそうですが、数年前までは提出順で、超過した際は受付を打ち切っていたため、私は受付開始日の朝6時から対応可能な郵便局に並んでいました。朝早くから郵送対応ができる郵便局には限りがあったり、朝早くから行けない人もいたり、そういう不平等もあったためか、現在では抽選になったようですね。
しかし、提出順では無くなったとはいえ、募集上限を超過してしまった場合は、抽選になってしまうので、抽選に外れてしまうと認定講習会に受講できず、来年まで待たなければなりません。
私が認定講習会に申し込みした年は、募集人数が4,000名でしたが、当日の受け付け開始から数時間で打ち切りになっていましたので、抽選になってしまう可能性は高いと思われます。
●認定講習会の書類審査後、受講申し込み書類を提出
4月に認定講習会申請書類を郵送後、認定委員会にて書類審査が行われます。そして、申請書類郵送から約1ヶ月後に書類審査の結果がメールにて通知されます。
書類審査で認定講習会受講の審査が通っても受講は確定ではありません。書類審査を通過したら、次にメールにて認定講習会受講の申し込みと受講費(20,000円)の振り込みを行います。これで認定講習会の受講のための手続きが完了になります。
●認定講習会受講後、認定試験受験の申し込みを行う
認定講習会受講の申し込みをメールで行い、受講費の振り込みが完了すると、8月中旬ごろに自宅に認定講習会のテキストが郵送されてきます。
現地受講の方は8月下旬(2024年は8月24日~25日)、e-ラーニング受講の場合は9月から1カ月間(2024年は9月5日~30日)に認定講習会を受講します。現地受講の場合も、e-ラーニング受講の場合も、全てのカリキュラムを受講しないと受講したことにならないので要注意です。特に、e-ラーニング受講の場合は、期限が1ヵ月なので忘れることが無いようにしましょう。
認定講習会の受講後、10月上旬までに認定試験受験の申し込みと受験費の振り込み(10,000円)を行います。認定講習会受講後から5年間は受験まで猶予があるので、認定試験は受講したが、試験が11月下旬なので1年間じっくり勉強したいという方とかは、受験申し込みはしないという方もいます。
認定受験を行う場合、申し込みを10月上旬までにすると、11月上旬に受験票が自宅に届きます。
そして、11月下旬に東京都内の会場にて認定試験を受験します。
●認定試験合格後、認定登録手続きを行う
11月下旬の認定試験受験後、約1ヶ月後に合否通知が自宅に届きます。
認定試験に合格していた場合、認定登録手続きを行う必要があります。認定登録手続きは、合否通知の書類に同封されている書類に沿って行います。認定登録手続きを行い、認定登録料(3,000円)を振り込みが完了すると、晴れて3学会合同呼吸療法認定士と認定され、2月下旬に認定証が交付されます。
●認定試験を受験までの流れをまとめると…
1.臨床工学士、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士のいずれかの資格を有していること
2.認定講習会申し込みを進める前に、認定委員会が認める学会や講習会などに出席し、12.5点以上を取得していること
3.認定講習会申し込み時に、実務経験年数が2年以上であること
4.3月に認定講習会の申し込みをe-mailで登録を行い、申請書類をダウンロードし、申請書類を作成していく
その際、職場に実務経験証明書をもらうこと。
5.4月の受付開始日当日に申し込み書類を郵送する
6.5月の認定講習会申し込み書類の書類審査後、認定講習会を受講申し込みと受講費(20,000円)振り込みを行う
7.8月下旬の現地開催か、9月から1ヵ月配信されるe-ラーニングにて認定講習会を受講する
8.10月上旬までに認定試験の受験申し込みと受験費(10,000円)の振り込みを行う
9.11月下旬に開催される認定試験を受験する
10.12月中に合否通知が届いたら、速やかに認定登録の手続きを行い、認定登録料(3,000円)の振り込みを行う。
このように、受験勉強以外にも受験までにもやることがたくさんあります。
また、必要金額としては33,000円ですが、認定委員会が認める学会や講習会に参加すると、合計で4万円~5万円は必要になります。
●試験形式
3学会合同呼吸療法認定士の認定試験の形式は、マークシート方式で全100問となっています。
マークシートは5択の選択です。
試験時間は170分で途中退出は60分以降で可能となっています。
試験時間としてはかなり余裕があり、私が受験した会場では最後まで残っていた受験者は半分ぐらいでした。
●3学会合同呼吸療法認定試験の試験勉強について
3学会合同呼吸療法認定試験の試験範囲は認定講習会で配布されるテキストの内容から出題されます。
この認定講習会テキストは8月中旬に郵送されてきますが、認定試験は11月下旬なので、試験勉強期間は3ヶ月ちょっとしかありません。
認定講習会テキストの項目は、
1.呼吸療法総論
2.呼吸管理に必要な解剖
3.呼吸管理に必要な生理
4.血液ガスの解釈
5.呼吸機能とその検査法
6.呼吸不全の病態と管理
7.薬物療法
8.呼吸リハビリテーション
9.吸入療法
10.酸素療法
11.人工呼吸器の基本構造と保守および医療ガス
12.気道確保と気道管理
13.人工呼吸とその適応・離脱 NPPVとその管理法
14.開胸・開腹手術後の肺合併症
15.新生児・小児の呼吸管理
16.人工呼吸中のモニター
17.呼吸不全における全身管理
18.人工呼吸中の集中治療
19.在宅人工呼吸
このように、解剖生理や血ガスなどの基礎的内容だけでなく、呼吸不全やその評価・治療、人工呼吸器の内容も多く含まれています。
また、数年前から新生児・小児の呼吸管理の内容も試験内容に入っています。
認定講習会テキストは合計で500ページと分厚く、テキストだけを見ると勉強のやる気が無くなります(笑)
500ページもあるテキストの内容をすべて覚えようと思うと莫大な時間を要しますが、要点さえ押さえれば短期間の勉強で試験に合格するのは可能かと思います。
●3学会合同呼吸療法認定士認定試験の勉強方法
先ほども述べたように、3学会合同呼吸療法認定士認定試験の試験範囲はかなり広く、テキストが配布されてから試験まで4ヵ月弱しかありません。
また、仕事をしながら試験勉強をしないといけないため、学生のように勉強にだけ専念できるわけではありません。
ここでは、私が仕事をしながら約4ヵ月で試験に合格できた勉強方法についてお話していきます。
まず、3学会合同呼吸療法認定士の試験勉強を効率良く進める上で、過去問集は必須となります。
今では、様々な過去問の参考書が販売されていますが、私が使用したのは『青本』と『アステッキ』を使用していました。
『青本』は2005年以降の過去問が掲載されており、問題の数としては圧倒的に多いですが、解説が少ないのが短所でした。
『アステッキ』は青本に比べると問題数は少ないですが、回答の解説がしっかりされているため、勉強しやすかったです。また、アステッキの良い点として、付属のアプリをダウンロードすると、スマホで問題を解いたり勉強をすることができるというところです。そのため、通勤時間や仕事の昼休み時間にはだいぶお世話になりました。
勉強していく上で、私がひたすら取り組んだのは『過去問とその周辺を覚える』『1単元の勉強に一週間使う』『週に一回は必ず過去問を解き苦手部分を見つける』この三つを徹底的に行いました。
認定試験に向けて使用した参考書類は以下の2つと青本を使用しました。
①過去問とその周辺を徹底的に覚える
まず、過去問の問題と講習会テキストと一致している内容は必ず覚えて理解します。
過去問の内容を講習会テキストで覚え理解できたら、その周辺の文章や表や数字も覚えます。
私は、過去問の答えや単語を赤シートで消えるペンで塗って覚えていました。それが出来たら、その周辺の文章で重要そうな単語や表や数字にもペンで塗りつぶして覚えるようにしていました。
②1単元の勉強に一週間使う
過去問を覚えれたとしても、内容が理解できていないと、いざ問題を解くとなると解けないことが多かったです。
そのため、内容も理解するために一単元勉強するために最低でも1週間使いました。
解剖や生理のようにページ数が少ない単元や、覚えやすい内容であれば二単元を1週間で勉強することもありました。
③週に最低1回は必ず過去問を解いて苦手部分を見つける
1単元の勉強に一週間しっかり使っていると、だいぶ内容や過去問が解けるようになりますが、徐々に覚えにくい言葉や表や数字なども出てくるかと思います。今自分が勉強している単元の中でも、自分が苦手としている部分を見つけるためにも、過去問を解くのは非常に有効でした。
過去問を解くことで、自分の得意な部分と苦手な部分が分かるので、どの部分を集中的に勉強したら良いか分かります。
自分は最低でも、今自分が勉強している単元の内容の過去問は週に2回解くことで苦手部分の克服と理解を図りました。
④残り2週間は苦手部分を徹底的に覚える
残り2週間になってくると、過去問を解きながら苦手部分をテキストで復習しながら覚えるというのを繰り返していきました。自分は特に新生児領域や人工呼吸器管理における適応基準や中止基準などの言葉や数字を覚えるのが苦手だったので、その分野の過去問を解きながら何度も復習をしました。
通勤電車や昼休みでは、アステッキのアプリで過去問を解いていました。
約4ヵ月弱このように勉強したことで、当日の試験では分からない問題は10問中1問程度で試験結果には自信がありました。
私は勉強は決して得意ではないほうでしたが、一日2時間このように勉強することで認定試験に無事合格することが出来ました。
勉強方法は人それぞれなので、私の試験勉強方法は参考の一つにしていただけたらと思います。